空手の突き技[正拳突き]について考える②
引き手・腰の使い方など。
空手道における、最大の手による攻撃技の一つ、[正拳突き]について考えてみました。
僕は基本、全空連系の人間ですので、全空連系の突き方から、考えてみようと思います。
全空連の正拳突きは、腰のあたり[帯の少し上]の位置に構えた拳を、相手の水月[みぞおち]をねらって、まっすぐ拳を180度ひねりながら、突きこむ。
簡単にいえば、そうゆうことですが、やはり日本に古来から伝わるものですので、そうそう簡単に誰でもが、一流の人から見て、[なかなかいいね]とはなりません。
腰のあたりから、相手の腹のあたりに、拳をひねりながら突けば良いのでしょう?
まあ、そうゆうことなんですが、いろいろありますよね。
まず、[引き手]とゆうものがあります、実際に突きを出すのは、どちらか片手の拳になるわけですが、その反対の手は、腰へとひかないとなりません。
なぜ腰にひくのかと言いますと、簡単に言うと、反動をつけるとゆうことです。
たとえば、ボールを投げる時に、右手に持ったボールを遠くへと投げる場合、左手を大きく振り回します、左手を振らずに、左手を動かさないように右手だけで投げても、遠くへは飛びません。
それと同じ理屈で、左手を引き手とゆう動作をすることで、反対の右手を、より強く、より速く動かすことができます。
一般的な突きと引き手の考え方は、こうゆうことなんですが、用法とゆうものもあるようです。
実際の攻防の際に、相手の攻撃を捌き、その捌いた手で相手の攻撃してきた手をつかみとり、腰にひきつけながらカウンターのような要領で、顔に拳を叩きこむ、もしくは相手のどこか引き付けやすい部分をつかんで、引き手によって引付けながら、拳を叩きこむ。などなどの解釈がかくされているようです。
実際に、攻撃してきた相手の手をとって、その手を引付けながら、拳を叩きこむ、とゆうのはなかなかに難しいことだとは思います。
琉球空手のほうからの伝わっているものとしては、攻撃してきた相手の動きを封じて、相手を[すえ物にして打て]と言われているようです。
相手が動けない状態、もしくは、さらにこちらにひきつけながら、拳を叩きこむのが本来の空手の正拳突きであるようです。
そのように考えますと、正拳突きにおける引き手とは、突き手に反動力をあたえて、より強く速く突く。とゆうことよりも、相手を引き込み、それに合わせて突きを叩きこむ用法であったと考えるべきかもしれません。
現在の全空連の引き手では、そのようには指導されておりません。
前者のように、引き手は、突き手に反動力をあたえて、より強く、より早く突くための動作です、と習います。
わたしも個人的には、その用法が好きです。
引き手による、反動力を使った打ち方とゆうのは、実は空手のみのものではないと、わたしは考えております。
わたしも少しではありますが、アマチュアボクシングも勉強させていただいたことがありますけれど、突く際に、しっかりとガードしている方の手(防御)を、あごのあたりにひきつけておきます。
やってみるとわかりますが、あごのあたりで、しっかりとガードしている手のほうにも、攻撃している時には、かなりの力が入っていることがわかります。
ボクシング式でワンツーを打つ時にもわかることですが、ワンを打ったあと、ツーを出しながら、ワンの方の手は、今度はすぐさまアゴに引き寄せ、固定させますが、これは実は、空手の引き手と同じ体の使い方をしています。
ただ、アゴにひいて固定するのか、腰にひいて固定するのか、ひく場所がちがうだけで、しっかりボクシングも空手と同じように、防御するほうの手を引く反動を使って、より強く早く、パンチを打てるようになっています。
ボクシングも、左手の力をまったく抜いて、右手だけの力でパンチを打っても、弱く、遅いパンチにしかなりません。
それは、パンチとゆうものは、打つほうの手の力だけではなく、反対のほうの反対方向への反作用の力があって、はじめて強く打つことができるとゆうことです。
さきほどの、ボールを投げる時に、左手を固定して、右手の力だけで投げても遠くへは飛ばない、とゆうこととまったく同じです。
ただ、隠された用法として、相手を引付ける、とゆう引き手の使い方も、古来には存在していた、とわたし個人としては解釈しております。
道場では、「突く時はしっかり腰を入れろ!」と指導されると思います。
これは、引き手を強く引くことと同じことで、より強く突きを打つためです。
これもしつこいようですが、ボールを投げる時と同じです。
より遠くへとボールを投げる時は、思いっきり左手を振り回すことと同じように、ほぼ無意識であっても、投げる瞬間に、腰を思いっきり回しているはずです。
実際にボールを投げるフォームをやってみると、腰を、投げる方向へ向けているのではないでしょうか。
これを、腰を動かさないように投げると、あまり遠くには飛びません。
腰を意識的にでも、無意識にでも、投げる方向に思いっきり向けて、回転させていると思います。
これは本能で、わかっていることなんだと思います。
狩猟時代のものでしょうか。
人間の特にオス(男子)の方は、最初から誰に習うでもなく、小石などを持ってかなり遠くへと投げることができると思います。
誰に習ったわけでもなく、左手を大きく振り回し、腰を回転させて、思いっきり腹に力を無意識に入れ、前足の膝は曲がり、前重心になっていると思います。
それらは、すべて空手の前屈立ちでの正拳突きで、指導されることだと思います。
つまり、はじめから知っていること、ともいえると思いますが、なぜできないのでしょうか。
やはり、根本的に正拳突き、とゆう[空手]特有の[動作]をしなくてはならない、指導されたようにやらなくてはならない。そうゆう考えが、もともとできていた動作から、離れてしまっているのかも、しれません。
ゲームセンターのパンチマシンを叩く時、ボールを思いっきり遠くへ投げる時と同じ動作をしていると思います。
その感覚を忘れないように、思いっきりパンチを出す、とゆうことを意識すれば、かってに腰はまわり、重心は前になり、引き手を思いっきりひきつけるはずです。
まずは、そのように、全身を使って思いっきり打つようにすると、良いと思います。
原始的ですが、体が強く腕をふりたい時に、自然と動く動作のなかに、無理のない自然なフォームが隠されているかもしれません。
フルコンタクト空手の世界には、たまに[腰を入れるのは時間の無駄である]とゆうような人もおられます。
それは、わたくしなどが意見できるような立場でもないのですが、たぶん、フルコンタクト空手の間合いが、近距離戦中心である、とゆうこともあると思います。
近距離では、腰を入れずに、前に倒れるように重心を乗せた突きができれば、一番良いとも考えられます。
手を伸ばせば相手に届くような間合いで、いちいち腰を回転させる必要は、あまりないかもしれません。
腰を回転させるのは、より体を大きく使い、より飛距離を稼ぐ、より遠くを突くことができる、とゆう要素があるからです。
フルコンタクト空手の間合いでは、近距離戦になることも多いですので、腰を回転させることが、不要である。とゆう考え方の方々も、多いかもしれません。
腰を回転させなくては、強い突きが打てないのか?
とゆうと、じつのところ、そうでもありません。
相撲を例に考えてみればわかると思います。
相撲は相手にぶち当たる際、もしくは相手に張り手を叩きつける際に、腰を回転させることはありません。
前に重心を移動させることにより、爆発的な威力を生み出す、前回の記事に書きましたが、[きざみ突き]の要領かと思います。
フルコンタクト空手の、腰を回さない突き方、とゆうのは、相撲や全空連のきざみ突き、そのような打ち方に近い打ち方ではないかと考えられます。
腰を回さずに、重心を前方向にぶつけることで、爆発的に突く、とゆう体の使い方は、現在の空手とゆうよりは、現在のものでいえば、相撲の張り手式、ともいえるのではないかと考えております。
もちろん、ばかになどしておりません。相撲の張り手を、プロの力士が手を拳にして、顔を叩かれた人が無事ですむはずがありません。
大変に有効な打ち方だと思います。
それでは、今回はこのあたりで失礼いたします。
ありがとうございましたm(_ _)m